いつもお世話になっている高田釦貿易さんに
今朝、奈良の貝ボタンの加工工場に連れて行ってもらいました。
日本の貝釦の歴史は、
ドイツから神戸に機械が入って、
最初は神戸で生産されていたそうですが、
その後、大阪→河内、現在の奈良に落ち着いたそうです。
貝ボタンには大きく分けると2種類あって、二枚貝と巻貝があります。
マッセアトゥーラでは通常、白蝶貝(二枚貝)を使いますが、
ご希望があった時には、高瀬貝(巻貝)も使います。
今回は、高瀬貝の加工工場に伺いました。
高瀬貝には産地があって、左から
ニューギニア産、インドネシア産、沖縄産です。
中でもインドネシアのマカッサル産が粘りがあって、底光りして良いとか。
原貝から、1つ1つ手作業でブランク(生地)を抜き取ります。
厚みが違うし、貝の形も1つ1つ違うので、ここは手作業となります。
抜き取った物(ブランク)を、
選別機で厚さごとに分けて(ロールかけ)、
次にいよいよ、形成工程に入ります。
平べったいままのブランク(生地)を、
1個ずつ、形成してゆきます。
その後で漂白や
薬品処理をして下地作りをします。
薬品の配分やさらし時間が、各工場のノウハウなのですが、
低温(通常80度だそうですが、森本さんは60度です)で長時間さらすと、
強度も落ちず、経年による色の変化も、ほとんど起こらず、長い間綺麗なままです。
温度を上げれば、使う薬品の量も減り、時間も短縮できるのですが、
釦がサクくなって、色も戻ってしまったりするそうです。
やはり手間暇かけてゆっくり、、ですね。
下地処理が終わって、必要であれば面取りをし、
最後にワックスをかけて化粧をします。
籾殻とイボタ蝋で磨き上げ、ピカピカに仕上げます。
これは10mm径の3mm厚ボタンです。
この日伺った森本さんのお宅では、
この仕事を始めて100年程になるそうですから、
農家の副業として奈良に広まりだした頃からって事になります。
今では海外でコストの低いポリボタンが大量生産されるようになり、
国内の貝ボタン産業は徐々に縮小を続けています。
現在、この保田地区で貝ボタンを作っているのは30戸程で、
そのうち常時稼動している工場は10件程度だとおっしゃってました。
それでも、奈良県の貝ボタン製造は全国シェアの85%を占めているとかで、
いかに需要が減ってるかを物語ると同時に、後継者問題も避けて通れないようです。
貝ボタンを使ってくれるシャツ屋さんが増えることを願っています。
それが後継者問題を解決する最短の近道ですから。
貝ボタンについて
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コメント / トラックバック 8 件
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« 銀箔の額縁
大和方面の出張はこれでしたか!
貝ボタン、ふだん何気なく
白蝶貝や高瀬貝って話してますが
実際の製作現場は、見たことがありませんでした。
読ませていただき、
何か、感慨深いものを感じますね。
とても貴重な取材ですね。
ありがとうございます。
どうもありがとうございます!
そうなんです、たかがボタン、されどボタン、、
シャツの雰囲気を左右するほどのボタンの存在感ってありますね。
手間暇かかる工程を見せて頂いて、
何かこう、ジーンと込み上げてくるものを感じました。
帰り際に言われた「どんどの、貝ボタンの良さを広めてや~」って、
いっけん、何気なく発せられたかのような言葉ですが、
凄~く、、重みを感じさせられました。
釦工場の様子、大変興味深く拝見させていただきました。
やはり、ポリ釦よりも貝釦の方が味わいがありますよね。シャツは生地の良し悪しばかりが注目されがちですが、釦も重要な要素ですよね。
だってシャツの構成要素は布(生地)と釦と糸しかないわけですから。
ただし貝釦の場合、困るのはクリーニングの際の釦割れ。
薄過ぎる場合は真っ二つ、厚過ぎる場合は一部欠損が多いです。
気に入ったシャツは自分で洗濯するようにしていますが、全部はなかなか難しいので困りものです。
何か対策はありませんか?
dunsfordさん、いつも書き込みありがとうございます。
回答が遅くなって申し訳ありませんでした。
色々な方法が考えられるのですが、
僕は悩んだ挙句、全て家で水洗い(洗濯機)をしています。
僕の意見だけではなく、
高田釦貿易さんにもご協力を頂き、回答をもらいました。
高田さん、ご協力ありがとうございました!
クリーニングによるボタンの破損(割れと欠け)は、
樹脂釦も同様に、クリーニング業界では問題になっているようです。
樹脂釦は、強度を増す事で大分改善されたようですが、
貝釦は、依然として解決していないとか。
高田さんは何度もクリーニング工場を見学し、状況を確認されたそうですが、
破損の原因は、やはりプレスとタンブラー乾燥だそうです。
まずプレスですが、特に袖部分は直接鉄板があたるようになっており、
縫製工場のプレス機より大分粗悪で、
これじゃ樹脂でも割れるよ~って感じがしたそうです。
僕自身の経験からも、この部分は高田さんの印象と同じですし、
また、貝釦が完全に割れてしまうのは、プレスによる破損・欠損がほとんどです。
水洗いされたシャツは
ボディープレスに着せてパッドで押さえ、
ボディーの内側からバキュームでスチームを吸い取りながら
プレスをかけるのですが、このパッドがクセモノで、パッドが硬化しやすいのです。
硬くなると、シャツのボタンを押さえつけた時に、釦が圧迫され過ぎて割れてしまいます。
パッドを交換すれば済む話ですが、価格競争の激しいクリーニング業界では、
経費の問題が最優先され、ギリギリまで使う事が多いそうです。
だから、交換のタイミングが悪いと割れてしまいます。
次にタンブラー乾燥ですが、ボタンの欠けは、ほとんどこれが原因です。
ドラム乾燥機に入れてガラガラ回すと、釦がドラムに当たって、
その衝撃で、ボタンの角が欠けてしまうんです。
この工程が改善されない限り、状況は改善されませんが、
角が立ったようなプロポーションではなく、丸みを帯びた釦を選ばれると、
少しはマシになるように思うので試してみて下さい。
あと、クリーニングの質で防ぐとしたら、
タンブラー乾燥とプレス機を避け、釣り干しとアイロンで仕上げてもらって下さい。
マッセアトゥーラのお客様でも、そういう方は結構いらっしゃいます。
当然、受けてくれるお店は限られ、金額も高くなります。
即日仕上げ100円!を謳い文句にしている店は避け、
クオリティを打ち出したお店がお勧めです。
釦だけではなく、当然のように生地も痛みます。
コストを優先すると、濡れ掛け(濡れた状態でのプレス)は当たり前なので、
極端に(不自然に)縮んだりします。
こんな感じで、これ!という回答ができませんが、
少しでもヒントになれば、良い物を長く使って頂けるんじゃないかな?と思っています。
少しでも多くの方に、少しでも本物の良さを知って頂きたいですから。
大変丁寧なご回答をありがとうございます。
参考になります。
やはり自分の場合、気に入ったものは自分で手洗い・プレスします。お店の人のように上手にはできませんが、少しくらい下手でも「味のうち」と思うようにします。
ボタンが割れたり欠けたりしているよりもいいですから…
しかし、クリーニング業界もいろいろ事情があるようですね、中には良心的なところもあるのでしょうが…
作り手(テーラーやシャツ屋さん)と洗い手(クリーニング)では服に対する思い入れが違うんでしょうね。
作り手側から見れば服は自分の子供のようなものでしょうが、洗い手側には単なる商売の対象物でしかないのかもしれません。
少なくとも私は作り手側の思いを受け止めてシャツに限らずスーツや靴を大切にしたいと思います。
dunsfordさん、ありがとうございます。
> 少なくとも私は作り手側の思いを受け止めて、
> シャツに限らずスーツや靴を大切にしたいと思います。
dunsfordさんのようなお気持ちを
少しでも多くの人が持って下されば嬉しいですね。
今の日本は精神面ではまだまだ発展途上だと思います。
僕は自分の持ち物で自慢できるものは、
自分がどれだけ長く使っているか、に基準があるように思います。
また、そんな物を選ぶようにしていますが、でも、
だからと言って何でもかんでも、そうではありませんけどね。
初めてここに書き込みます。私も貝ボタンの大ファンです!!
ここのページに載っている貝ボタン工場に私も是非行ってみたいと思っているのですが、工場の名前を教えていただけないでしょうか。
回答よろしくお願いします。
do-natuさん、コメントを頂きありがとうございます!
見学させて頂いた工場は、
個人宅の一部を使っていらっしゃる所なので、
行っても分からないと思います。
どの業界でも良くあるパターンかもしれませんが、
農家の方が冬の寒い時期の収入源にされるようなイメージでしょうか?
なので、一般の方が行っても見付からないし、
もし見付けられても入れてくれない可能性があります。
方法として僕が思いついたのは、
本文のリンク先にある川西町に直接頼んでみてはいかがでしょう?
その情熱で、ご紹介下さるかもしれませんよ。
無責任で申し訳ありませんが、マッセアトゥーラの取引先さんには、
ちょっと、僕からお願いできる事ではないので、、
こういうもの作りって絶やさないようにしたいですよね。
その為にも、もっと多くの人に貝釦の良さを知ってもらって使ってもらう。
その努力が必要な気がします。。
もし見学が実現されたら、是非レポートお願いします。
ご連絡頂ける事、楽しみにしております。